
メランコリア
MELANCHOLIA
2011年
デンマーク・スウェーデン・フランス・ドイツ
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:キルステン・ダンスト(ジャスティン)
シャルロット・ゲンズブール(クレア)
アレキサンダー・スカルスガルド
(マイケル)
ブラディ・コーベット(ティム)
キャメロン・スパー(レオ)
シャーロット・ランプリング(ギャビー)
イェスパー・クリステンセン
(リトル・ファーザー)
ジョン・ハート(デクスター)
ステラン・スカルスゲールド
(ジャック)
ウド・キア(ウェディング・プランナー)
キーファー・サザーランド(ジョン)
ジャスティンとマイケルは
自分たちの結婚披露宴へ向かう途中、
車が立ち往生し予定の二時間も過ぎて到着。
妹のために夫と自宅で披露宴を準備していた姉・クレアは
遅れたうえに自分勝手な振る舞いをする妹に腹を立てる。ジャスティンの振る舞いに
マイケルも理解できず、朝を待たずに出て行ってしまう。
そんな時、地球に惑星メランコリアが近づいてくるが・・・。
トリアー監督を知ったのは15年ほど前にWOWOWで放送された
「キングダム」でした。なんだかよくわからないホラーめいたドラマで、
なんだかよくわからない面白さ(笑)を感じて、お気に入りの監督に♪
ドラマの終わり(だった?)に、ご自身が出てきて解説(?)をしている
姿も、なんだかわからないけど(笑)気にいってしまいました。
でも、『ドッグヴィル』以来ご無沙汰していて、久しぶりのトリアー作品です。
トリアー作品によく出演しているステラン・スカルスゲールドも
観たかったし♪
冒頭、音楽だけのイメージ映像のようなものが流れます。
正直、何なの?このまま、ずっとこれ?と不安になりましたが、
美しい映像に次第に落ち着かされていき、
第1章ジャスティンが始まります。
結婚披露宴に向かう、大きなリムジンが山道ような細いカーブを
曲がれず、何度も切り返したり、バックしたり・・・アクシデントの中、
花嫁ジャスティンは幸せそうに笑っているのですが、
式場に着いてからは、憂いの世界へ進んでいきます。
手持ちカメラのせいで画面がよく揺れ、カット割も多くて
トリアー監督作風は相変わらずなんですが、
これがジャスティンの苛立ちや不安感を感じさせるのに有効で、
観ているこちらまで落ち着かない気分に・・・
新郎も愛想が尽き、出て行ってしまう始末。
そして第2章クレア。
披露宴から7週間後。空には地球に近付きつつある惑星メランコリア。
異変に怯えるクレアは、憔悴しきった妹を我が家に呼び寄せる・・・
手を借りなければも一人では歩けないほどになってしまった
ジャスティンですが、メランコリアがその姿を大きくするほどに
蘇っていく様は、怯えるクレアとは対極にいる感じ。
メランコリアはジャスティンのように生きるすべを失くした人間には
破滅や無をもたらしてくれるある種の希望としてあるのでしょうね。
近づけば近づくほど、メランコリアから生気をもらっているような
ジャスティンに対して、母として息子の未来や妻として生活を
案じるクレアにとっては、メランコリアはただただ恐怖の存在。
そして、映画を観ている者にとっては、ひたすら美しい存在。
ジャスティンとクレア、クレアの幼い息子が手をつなぎ迎える
ラストシーンは、観ている者も巻き込む“無”の世界への入り口・・・
エンドロールが流れ、映画が終わり席を立って暫くしても
何も考えられない状態に陥ってしまった感じになってしまい、
自分でも驚きました(笑)。
巨大惑星が地球に衝突する映画・・・アメリカだったら
どうにかして阻止する映画を作るんだろうけど、
トリアー監督は違いましたね。
不安感や恐怖感から解放される感じは、いつものように
感じますが、このラストは究極の解放なのかも。
この世の善も悪も、それこそ神も悪魔も一瞬で消える爽快感を
感じてる人もいるのかもしれない。
ジャスティンが監督の投影ならば、この作品は監督の
希望、そのものなんでしょうね。
同じ終焉の時を迎えるのなら・・・気持ちよく逝きたいものです。
監督を語るほど、作品を観ていないし、知りもしないので
これ以上は言えないのだけれど(笑)
ラストに向かってじわじわと感じてくる映画には違いなく、
ところどころに配された絵画や使われている音楽の意味が
わかる方には尚更深く感じ入る事ができるのでしょうね~
知ってる絵画はいくつかあったけどね・・・
さてさて、ステラン。
披露宴でジャスティンの会社の上司として登場。
上辺はジャスティンを祝福しつつ、実は仕事の事しか興味のない男。
今回も嫌な奴でした(笑)。でも、好いよ♪
息子と共演でしたしね、思ったより存在感ありました。
息子、アレキサンダーくん、かわいそうな新郎でしたね~
次回作、『バトルシップ』?宇宙人と戦うのね~
アメリカ映画だものね~(笑)
この記事へのコメント
まっつぁんこ
まだ記事書いてないけど「孤島の王」という映画にも出てました。もちろんあまりいい役ではありません。(笑)
真紅
冒頭のスーパースローの映像、結局あそこで全て語られてるんですよね。
私が気になったのは、クレアが息子を抱いてゴルフ場で逃げてるんだけど、そこに「19」って旗があるんですよ。
ゴルフ場って18番までなのに、、と思って。。
ジャック・バウアーが「うちのゴルフ場は18番ホールまであるんだ!」って自慢してましたけど、何を意味してるのかは結局わからず仕舞いでした。
究極の解放、、ホントその通りですね。
ラストは風圧を感じました。。生きててよかった、って。
ひらで~
ステラン、そう最近になって出演作が
相次いで公開され、ファンにとっては
嬉しいのです♪
でも、『孤島の王』は単館扱いですので、
地味に公開され、たぶんこちらでの
公開はないでしょう(--;)。
まっつぁんこさんは観られるのでしょうか?
羨ましいです。
ステランはその存在感で威圧的な
嫌な人物がぴったり!
悪役がしっかりしてないと、
面白くないですものね♪
ひらで~
こちらこそ、ありがとうございます。
TB送ることができて良かったです
19番ホールの事、私もあれ?って
思っていました。
真紅さんのコメントで調べてみようと
思いたち、IMDbのトリビア欄で
according to Lars von Trier,
'Hole 19' is 'limbo'.とあるのを
見つけました。
limboは辺獄、辺土だそうで、
ローマ・カトリックにおいて、原罪を犯したが
地獄に落ちるほどでもない人間が死後に
行き着くと考えられた場所だとか。
所謂、天国と地獄の中間の場所なんだとか。
ウィキペディアで簡単に調べただけですから
真意の程はわかりませんが(笑)
なお、トリアー監督の出身国デンマークには
“Limbo”というゲームがあって、
少年が森の中で罠にかからないように
妹を探す、という内容ながら、罠にかかると
即死亡となるそうで、かなりシュール(笑)
そういう、お国柄なんでしょうかね~。
sakurai
前作「アンチクライスト」の時は、きっとどん底だったと思いますよ。
それが少々上向きになりつつ、それでも絶望は忘れない・・みたいな。
今回は、随所にらしさがありましたが、達観したような潔さが感じられました。
ステランと言えば、何と言っても「奇跡の海」でしょうか。
あのインパクトは、監督の名前と一緒に刷り込まれました。
私は息子の方を贔屓にします。
ひらで~
「アンチクライスト」は未見ですが、
精神状態によってタイプが変わるのは
役者も大変そう(^^;)
ステンラン、よく一緒にいられたものだと
感心します・・・「奇跡の海」もね、
全体において凄かった・・・。
でも、カッコいい姿の映画もあるので
トリアー監督作以外のも観てください(笑)
sakurai
実はあんまり好きな役者さんじゃないのですが、一番印象的なのは「宮廷画家ゴヤは見た」のゴヤかなあ。
映画自体も素晴らしかったですが、このステランは見事だった。ラテン系には見えませんが、あれはよかった。
ちょっと昔だと「キスキスバンバン」もよかったな。
「キング・アーサー」のゲルマンの酋長役は、すんげえはまってたと思いましたよ。
やっぱステランさんはゲルマン民族!!と言う風に感じます。
ひらで~
お~♪かなり観ていらっしゃいますね。
実は私も初めのうちは好みでは
なかったのですが、観ているうちに
好いかも~♪といつの間にか盛り上がって
お気に入りの人になってました(笑)
映画自体は良くなくてもカッコ好かったり
すると、それで満足です・・・
例えば『薔薇の眠り』とか(笑)
でも、やっぱり強い悪役が好いですね♪
『キング・アーサー』の酋長(しゅうちょう?笑)
ハマり役ですわ~