麦の穂をゆらす風
THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY
2006年 イギリス/アイルランド
監督: ケン・ローチ
脚本: ポール・ラヴァーティ
音楽: ジョージ・フェントン
出演: キリアン・マーフィ (デミアン)
ポードリック・ディレーニー (テディ)
リーアム・カニンガム (ダン)
オーラ・フィッツジェラルド (シネード)
メアリー・オリオーダン (ペギー)
1920年のアイルランド。
英国からの冷酷な支配から独立しようと若者たちが
義勇軍を結成する中、デミアンは医者の道を進もうとロンドンへ旅立とうとしていた。
そんな矢先、英国軍の非道を目の当たりにした彼はアイルランドに留まり、
兄テディと共に独立を目指して戦うことを決意する。
公開時、時間が合わず見逃していた作品です。
この映画をちゃんと観るにはかなりの歴史的な予習が必要かとも
思われますが、どの国でも起こりえる戦時下の
一組の兄弟を中心にした一家の物語としても
理解できるので、ただ観るだけでも大丈夫でしょう。
現に、私も不勉強な者ですから英国とアイルランドとの関係は
なんとな~く耳にしている程度でした。
映画などでもアイルランドといえば、“IRA”の物騒なイメージで、
直ぐに思いつくのが、
ショーン・ビーンがIRAのテロリスト役だった『パトリオット・ゲーム』、
ブラッド・ピットがIRAのテロリスト役だった『デビル』。
英国映画ではロンドンでのテロ事件を扱った『父の祈りを』、
そして、最近観た『プルートで朝食を』でもそうですが、
とにかく暴力的な描写が焼きついています。
でも、それらの歴史的背景にこうして少しでも触れてみると
知らないというのは怖い事だと実感しました。
英国との関係の中でアイルランド自身が辿った歴史・・・
これらを踏まえた上で、ちゃんと観る目が必要なんですね。
映画一本ですべてを理解はできないけど、
そう考えるきっかけになったこと考えると映画を観て好かったな、と思います。
映像は、実に静かに彼らの生活や自然を捉え、
戦いや英国軍の仕打ちなどもそう過激に描いてはいない分、
すーっと自分の中に入ってきます。
色も穏やかで優しく、題名からも感じ取れる風が感じられます。
そんな中でどうしてこういうことを人間はするのか?
哀しさを通り過ぎ、愚かさを感じます。
野原にはアザミかな?可愛らしい花が咲いていて、
そこを通り過ぎると、悲惨な光景が・・・。
本当に、何故?という思いでいっぱいになります。
デミアンを演じたキリアンくん。
『プルートで朝食を』を観たばかりだったので、あまりの違いに感動です。
もともと、線が細いのに不思議な力強さを感じる彼ですが、
オーディションで勝ち取ったというこの役は、正しく彼の役ですね。
デミアンの兄テディ役のポードリック・ディレーニーはこれが日本初お目見え?
ラストの弟との切ない対峙シーンでは泣かせました。これからが期待です。
若い義勇軍な中で引き締め役とも思えるダンを演じたリーアム・カニンガム。
ヘレン・ミレン主演のドラマ 「第一容疑者 姿なき犯人」での、温かみのある
眼差しはここでも優しく素敵でした。
若い人たちの中にあって、こういう大人がいると安心できますね。
この記事へのコメント
由香
こういう映画を観ると泣くだろうなぁ~と思って鑑賞しましたが、ただただ呆然として遣る瀬無い気持ちになりました。
キリアンは素晴らしい演技をしていましたね~
運命に翻弄された若者の瞳が痛々しかったです。
ひらで~
戦争の悲劇を
前面に押し出すのではなくて、
唄のように優しく語られている、
そんな印象の映画でしたね。
kira
義勇軍の、ハンチングにジャケットといういでたちで
普段のままの彼等が銃を手に野原で訓練する。職業的軍服と、生活感のある私服の戦いも象徴的でしたね。
こころがイタイ作品でした。。。
マリー
この作品は劇場で観たんですが、あまりの衝撃にレビュー書けなかったんです。
私が“アイルランド紛争”に無知だったせいもありますが~同族同士の争いがここにもあったのか・・・と驚いてしまって。
監督やキリアン自身の身内にも~こういう目にあった方がいたそうで、それはそれはリアルでしたよね。彼らがどんな気持ちで演じていたのか・・と考えると苦しくなりました。
静かな作品の中に、ひしひしと力強さを感じたのは「本物」の力かもしれないと。。。
キリアン、やはり素晴らしかった!
ひらで~
嫌とも、言えないし、
逃げることもできない・・・
弱さを見せたら生きられない。
普通の若者が、戦争では
普通にしていられない状況が
辛かったです。
ひらで~
そういう時代じゃなかったら、
人を救う医者になっていただろうに・・・
人の命を奪わなければならない状況に
どうすることもできない辛さ、
悔しさが伝わってくる
キリアンくんでしたね。